企業にとって年末年始の冬季休業は、社屋の出入りが極端に少なくなる特別な期間でもあります。
そのため、通常は稼働させていても、休み中は稼働を止めていい設備もあります。
可動と停止の判断を誤ると、休業明けに設備不良が発生し、年始の業務がスタートからつまずくことになりかねません。
今回のブログでは、冬季休業中に企業が「止めてもいい設備」と「止めてはいけない設備」はどこで線を引けばいいのかをわかりやすくご紹介します。
冬季休業中の設備管理の重要性
冬季休業の施設内の設備は、次のようなリスクが増える期間でもあります。
- 気温低下による凍結リスクの増加
- 長時間の停止による劣化や固着
- 水分の蒸発によるトラップ枯れからの臭気逆流
- 無人による異常の発見遅れ
- 停電や設備故障に気づけないまま放置されるリスク
つまり、冬季休業は「止めることで安全が保たれる設備」と「止めることでトラブルの危険性が増す設備」があり、
設備がどの分類に当たるかを把握しておくことで、年始のトラブルを大幅に減らすことが期待できます。
冬季休業中止めてもいい設備
まずは、一般企業で比較的安全に「止めてよいことが多い設備」から紹介します。
ただし、建物の仕様や地域、用途によって判断は変わるため、最終的には設備業者との確認が必要です。
◎ 空調(一般的なオフィス空調)
冬季休業中、オフィスの空調は止めていても問題ありません。
ただし、すべての部屋の空調を停止することで問題が生じる場合もあります。
空調を停止する際の注意ポイント
- 機械室やサーバールーム専用空調は止めない
- 冷暖房切替が難しい古い空調は、再起動に時間がかかる場合がある
- 停止前にフィルター清掃を行う方が休業明けの不調を防ぎやすい
人の出入りがない場合、空調を使用しないことで電力消費を大きく削減することができます。
◎ 給湯設備(給湯器)
給湯器は、使用しない期間が明確な場合止めても大丈夫な地域もあります。
ただし、以下のポイントには注意したうえで止めるようにしましょう。
給湯設備を止める際の注意ポイント
- 寒冷地では配管凍結を防ぐため「凍結予防運転」をオンにしておくことが多い
- 電気式は電源オフのみで問題ないが、ガス給湯器は元栓操作を行うかどうか契約者側で判断が必要
- 長く使っていない給湯器は、年明けにお湯が出るまで時間がかかる場合がある
お住まいの地域の気候により完全停止可能な地域もあれば、凍結防止運転が必要な地域もあるため地域に合わせた運転をするようにしましょう。
◎ 換気設備
換気設備は常時運転が必須と言うわけではないため、共用部の一般換気扇などは止めても支障がありません。ただし、他の設備同様に注意することもあります。
換気設備を止める際の注意ポイント
- トイレ換気扇を止めると臭気がこもりやすくなるため、人がいないときは止めるようにする
- 機械室など熱を逃がす役割で換気設備を使用している場合は、部屋の換気は停止しない
- 湿度の高い部屋(シャワー室など)がある場合は止めない方が良いこともある
換気設備は、機械室などの特殊な場所では止めると支障が出る箇所もあるため、一般的な換気目的かどうを判断する必要があります。
◎ 照明・コンセント
照明やOA用コンセントなども長期休みの場合は止めていい箇所も多くあります。
ただし、監視カメラなどの休み中も起動しておく必要があるものもあるため、他の設備同様に判断が必要になります。
照明・コンセントを止める際の注意ポイント
- 監視カメラや警備装置などは止めない
- 無停電電源装置(UPS)は停止しない
- 電源を切ることで再起動が不安定になる古い機器がある場合は注意
冬季休業中止めてはいけない設備
これから紹介する設備に関しては、冬季休業ということで停止するとトラブルにつながりやすい設備になります。
◎ 排水ポンプ
建物や地下室、マンションなどの排水槽に設置されている排水ポンプが停止すると、汚水や雑排水が汲み上げられなくなり、地下が水浸しになったり、汚水が溢れたりする可能性があります。
特に汚水が逆流すると、悪臭や衛生上の問題も発生するため気を付けましょう。
◎ サーバールームの空調
会社などでは、データ管理、メールの送受信、ホームぺージなどにサーバーを使用しています。
サービスを提供するために、サーバーは年末年始に関係なくメンテナンス以外は稼働していることが標準で、
空調を止めてしまうと短時間で機器温度が上がり、業務に支障が出るような障害が発生します。
注意ポイント
- サーバールームの空調は常時運転が基本
- 補助空調も含め冗長性の確認が必要
- 故障時の警報メールや監視体制を再確認すること
他の空調と違い、サーバールームなどの常時稼働が標準のエリアの空調停止は重大事故につながります。
空調を止める場合はサーバーの稼働状況を確認して行うようにしましょう。
◎ 消火設備・防災設備
防災設備はセキュリティや防災の観点から、長期休みといえど電源を落とすことは推奨しません。
消防設備・防犯設備の代表例
- スプリンクラー
- 自動火災報知設備
- 非常照明
- 火災感知器
- 非常放送
- 給水ポンプ(消防用)
長期休みに入る際は、逆に設備が正常に動いているかを設備の管理者は確認しておきましょう。
◎ 凍結防止ヒーター
寒冷地では建物の配管に凍結防止ヒーターが設置されている場合があります。
凍結防止ヒーターを止めると、配管の凍結や破損が起きやすくなり、修繕費用も高額になってしまいます。
凍結防止ヒーターを止めたことによる事故例
- 屋外立管が破裂
- メーターまわりが凍結して漏水
- 給湯配管の破損
特に外気にさらされている配管のヒーターの電源を落とすと、配管の凍結が発生しやすいため、冬の期間は凍結防止ヒーターの電源を落とさないようにしましょう。
◎ 設備機械室の給排気ファン
設備機械室は発熱機器が多く、冬でも一定の温度を保てるように換気が必要になります。
換気を止めると熱がこもってしまい、機器が故障しやすくなります。
給排気ファンを止めない方がいい理由
- 熱がこもるとポンプや制御盤の故障につながる
- 湿度が高くなると錆が進行する
- 臭気がこもり、休業明けに不快感が出る
休業前に必ず行うべき事前点検
止めるべき設備と止めない設備を把握したら、次に長期休みに入る前に必要な事前点検のチェックポイントを確認していきましょう。
| 点検箇所 | 確認するポイント |
| 空調設備 | フィルター掃除、異音やエラー表示が出ていないか確認、 サーバールーム・機械室の空調監視状況 |
| 給排水設備 | トラップの封水確認、排水ポンプの動作確認、外部配管の凍結リスク確認 |
| 電気設備 | 非常電源の動作確認、不要機器の電源オフ |
| ガス設備 | 使用しない元栓を閉める、給湯器の設定確認 |
冬季休業のトラブルを防ぐためのひと工夫
企業が冬季休業でよく困るのが、休業明けの際に設備トラブルが連鎖的に発生することです。
トラブルのリスクを減らすために、次のような対策が役に立ちます。
1. 休業前日の「簡易通水」
トイレや流し台の封水は数日で蒸発することがあります。
休業前日の通水で封水を満たしておくと、臭気逆流を防ぎやすくなります。
2. 設備ごとの「停止リスト」を作る
担当者によって判断が分かれると、どれが止まっていてどれが動いているべきか分かりません。
設備の種類ごとに「止めていいもの、いけないもの」をまとめた文書を用意しておくとミスが減ります。
3. 冬季限定の巡回スケジュール
長期休館中でも、可能であれば数日に一度は設備点検で巡回するのが理想です。
簡単な確認だけでもトラブルの早期発見につながります。
まとめ
冬季休業は施設の設備にとって、故障リスクが高まる期間とも言えます。
光熱費の節約のためにむやみに設備を止めると、凍結や漏水、再起動不良など、休業明けの混乱につながる場合があります。
止めてもいい設備の例
- オフィス空調
- 給湯器(地域による)
- 一般換気設備
- 照明・OA電源
止めてはいけない設備の例
- 排水ポンプ
- サーバールーム空調
- 消防設備
- 凍結防止ヒーター
- 機械室の換気
冬季休業前にこれらの見極めを行い、事前点検と運転管理を徹底することで、休業明けのトラブルを大幅に減らせます。
安全に冬季を乗り切るためにも、今年の休業前点検は慎重に行いましょう。

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