夏の暑さが本格化する前に、空調設備の状態を確認しておくことは、業務の安定運用や快適な環境維持に欠かせません。
今回のブログでは、空調メンテナンスで見落とされがちな注意点や実際の現場でのトラブル事例、事前対策の考え方をわかりやすくお伝えします。
空調トラブルは、なぜ「夏」に多いのか?
「エアコンが効かない」「水が漏れている」「室外機から変な音がする」――
これらのトラブルが最も多くなるのが、まさに気温が急上昇する7~8月です。
実は、こうした不具合の多くは、機器の老朽化や汚れによって生じる“予兆のある故障”です。
にもかかわらず、点検が後回しになり、猛暑日の稼働中に突然故障するケースが非常に多いのです。
しかも、繁忙期は業者側の対応も立て込み、すぐに修理できないという問題も発生します。
実際にあった事例ですが、ある公共施設では7月の暑い盛りに空調が停止し、緊急で修繕に伺うことになりました。
原因を調査すると室外機の基板の故障ということがわかり、故障した部品の取り寄せに数日かかるため、部品が届くまでは換気や扇風機での対応をお願いすることになりました。
もし、事前に点検しておけばトラブルも防げたかもしれません。
フィルター掃除だけが点検ではありません
点検と聞いて「フィルターの掃除くらいなら自分で出来る」と思われるかもしれませんが、実際には見落とされがちな重要箇所がたくさんあります。
よくある“見落としポイント”
・熱交換器の汚れ:
温度調整をするための重要な部品です。
ホコリや油が詰まると冷房能力が大幅に低下します。
飲食店で使用している場合は特に油汚れがたまりやすいため注意が必要です。
・ドレン配管のつまり:
エアコンから発生する結露水を適切に排水するための配管です。
この配管が詰まると室内機から水漏れが起こり、天井や内装が傷む原因になります。
・室外機の設置状況:
室外機の周囲に障害物があると冷却効率が落ち、故障の原因にもなります。
点検の“質”は業者選びによって大きく左右されます。
空調機器の構造を十分に理解している業者であれば、電装部の点検、冷媒の圧力確認、配管の状態チェックなど、清掃にとどまらない総合的な点検を行います。
こうした専門的な確認をして貰えるかどうかで、設備の安全性や長期的な安定稼働に差が出ます。
点検とは単なる作業ではなく、設備全体の状態を的確に把握する重要な工程です。
よくあるトラブルとその原因
実際の現場では、よく聞かれる空調トラブルは以下の原因で発生していることが考えられます。
「冷たい空気が出ない」「風は出るけど冷房が効かない」
- 熱交換器の目詰まり
例えば、稼働時間が長い施設では、ホコリ等のゴミも多く発生します。
そのため、空調機の内部に汚れが蓄積しやすく、冷房効率が低下しやすい傾向があります。
- 冷媒ガスの不足
冷媒ガスは空気を冷やすための空調機内部で循環するガスです。
密閉された配管内を循環するガスのため自然に減ることはありません。
そのため、冷却ガスが原因の冷気が出ない症状は配管の緩みや施工時のガス充填が不十分なことが考えられます。
- 室外機ファンの不具合
室外機が正常に動作しないと熱交換が出来ないので、冷風や温風が出なくなってしまいます。
「エアコンを動かしたら変な音がする」
- ファンモーターの摩耗
ファンモーターの軸受けまたはシャフトが摩耗して回転時にブレが生じると、部品同士が接触することで金属音が発生することがあります。
- 配管や部品の緩み
配管を固定している金具が経年劣化でゆるみ配管の振動で音が出ることがあります。
また、ドレン配管が天井材に接触している場合、水流や振動で音がすることがあります。
経年劣化で現れる症状もありますが、施工時の固定が不十分だった場合も起こります。
- 異物の混入
送風ファンにゴミが引っ掛かり、物理的に音が出ている場合があります。
「エアコンから水が漏れている」
- ドレン配管のつまり
ドレン配管内は湿気が多い為、藻やホコリが配管内に蓄積して排水出来なくなり、ドレンバン(結露水を受けるトレイ)に水が溢れることで水漏れになる場合があります。
- 傾斜不良や施工ミス
空調機の施工時に水平に設置されていない場合、ドレンパンから水漏れする場合があります。
- 結露の処理不足
冷媒配管の断熱処理がされていないと、冷房運転時に外気との温度差で結露が発生します。
発生した結露が結露水となって水漏れに発展する場合があります。
点検履歴の記録がトラブル対応の精度を高める
空調設備の管理において意外と見落とされがちなのが、「過去の点検履歴を残しておくこと」の重要性です。
どの部品に劣化の兆候があったのか、冷媒ガスをいつ補充したのか、室外機の異音はいつから発生していたのか――。
こうした情報がきちんと記録されていれば、トラブルの連絡があった際にも、迅速かつ的確に対応することができます。
例えば、「エアコンの冷房の冷気が弱い」という相談を受けた際に、前回点検時に「冷媒圧が低下傾向にあった」と記録が残っていれば、
冷媒ガス漏れの可能性をすぐに疑い、効率的な対応が可能になります。
一方で、過去の記録が残っていない場合、毎回ゼロからの調査が必要となり、対応にかかる時間やコストが大きく膨らんでしまいます。
記録を残すのは紙だけでなく、簡易的なもので構いませんので、デジタル台帳としてまとめておくことをおすすめします。
クラウドを活用すれば、ネット環境さえあれば現場でも確認でき、建築会社や管理会社、施設の担当者など複数人で情報を共有することも可能です。
空調機器の状態や履歴といった「見えにくい情報」を見える化することが、トラブル予防やコスト管理の面でも大きな武器になります。
空調管理は「建物の品質」にも関わる
建築会社の皆様にとっても、竣工後の設備トラブルが発生すると、「最初の設計や施工に問題があったのでは?」と疑われる場面があります。
しかし、空調は使用後の環境やメンテナンスの有無によって状態が大きく変わる設備です。オーナー様に向けて、「定期点検の必要性」をしっかり伝えることは、信頼を守る意味でも非常に重要です。
設計段階で点検しやすい設置方法を意識したり、引き渡し時に点検スケジュールの提案を添えたりといった“ひと工夫”が、後々のトラブルを減らすことにつながります。
まとめ:夏前の一手間が、安心と快適を生み出す
空調トラブルは、一度起きると業務やサービスに大きな影響を与えます。
その一方で、「点検をしておけば防げた」という事例も数多く存在します。
大切なのは、定期的な点検と、信頼できる業者との連携です。
夏前の点検は、設備にとっての“健康診断”。負荷がかかる時期を乗り切るための準備です。
㈱吉田設備では、郡山市・二本松市を中心に、法人施設の空調メンテナンスを数多く手がけております。ご興味のある方はぜひお問い合わせください。
快適な夏を迎えるために、空調の状態を今一度見直してみてはいかがでしょうか?
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